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なんごくたいへいき

南国太平記

直木 三十五

線上閱讀直木 三十五《南国太平記(なんごくたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 493,291 字 · 991 頁

青空文庫

その上に、密貿易は、斉彬公の仰せられる如く、そのうち、天下公然としての交易になりましょうが――安心して、明日にも手前、死んでよい時節となりました」

調所は、一息に、ここまで喋って、茶をのんだ。お由羅は、頷いたが、調所には、返事をしないで、深雪に、鋭く

「何故、返答せぬ」

「はい」

「仙波の娘か、娘でないか――」

深雪は、頭の中が、くらくらとしてきた。腋の下にも、額にも、汗が滲んできた。そして

「娘でござります」

と、答えると、身体も、心も、冷たくなったような気がした。手も、膝も顫えた。

「そうかい、それで、何んのために、名を偽ってまで、御奉公に上ったえ?」

深雪は

(三人きりで、調所は老人だし、この間に突いてかかろうか)

とも、思ったが、そう思っている心の底には

(済みません、許して下さい)

と、お由羅の前へ身体を投げ出して、泣きたいような気持もあった。

「深雪、何をするために、お上りだったい」

お由羅の言葉が、鋭くなってきた。

「返事が、できませぬか」

いつもの、やさしいお由羅でなく、深雪の身体も、心も、針のついた手で、締めつけてくるように感じる、声であった。

(お父上も、殺されなされた――妾も、こうなった上は死ぬほかはない)