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なんごくたいへいき

南国太平記

直木 三十五

線上閱讀直木 三十五《南国太平記(なんごくたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 493,291 字 · 991 頁

青空文庫

と、思った時

「小太郎は、わしのことを知るまい。よって、わしが、牧の倅であることを打明け、父を狙う小太郎を、そのままに、許しておけぬ故に参った、と、尋常に名乗りかけて、勝負致そう。もし、武運拙く、わしが斬られたなら、綱手、死んでくれい。な、わしを兄へ手引致すのではない。牧の倅を、小太郎の首を狙っている者を、小太郎の許へつれて参るのじゃ。武士の娘として、詮ない、宿命と、諦めてくれい。わしとて、恋仲の女の兄を討つに、気軽に、参れるか。小太郎に討たれて、二人で抱き合って死ぬか、小太郎を討って、帰参して、二人の恋を完うするか。綱手」

「はい」

綱手は、涙声であった。

「綱手、そちは、わしを、本当には、想ってはいてくれぬな」

月丸は、鋭く、叫ぶように云った。

「えっ?」

「教えずとも、存じておる。小者より聞いておる。然し、そちを欺して、討ちに行くのをしとうないから、そちの口から聞いて、そちの心を知りたいと存じておった。それに、わしが邸までも捨てておるに、兄一人が、これ程申しても捨て切れんか。最早、頼まぬ。小太郎の宿所を申そうか。高麗橋じゃ」

「ええっ」

京から旅人が来るのは船より外になかった。