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なんごくたいへいき
南国太平記
直木 三十五
線上閱讀直木 三十五《南国太平記(なんごくたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 493,291 字 · 991 頁
と、挨拶した。
「申し遅れましたが、仙波小太郎――御用の趣、何か、妹の儀に就きまして――」
と、微笑むと
「いいや、家中に、御存じの、騒がしきこと有りまする折柄、或いは、御断りになろうかと存じまして、御無礼ながら、左様の口実を設けましたる次第、御容赦に預かりとうござる」
月丸は、丁寧に、礼をした。
「ははあ、――して、実の用件は?」
「唯今、申し上げた、某の姓名、百城月丸とは、蔵屋敷のみにての通り名、本名は、牧周馬、御存じの、牧仲太郎の倅でござる」
小太郎は、じっと、月丸を見つめた。月丸は、俯向きながら
「武門の慣わしとして、かく、お見掛け申したる上は、是非に及ばぬ儀と心得――」
ここまで、いって、月丸は、微笑しながら、面を上げた。小太郎は、頷いた。
「――尋常の勝負を致したい。この儀、御承引下さるまいか」
「いかさま」
小太郎は、もう一度頷いて、月丸の、立派な態度に、感心した。
「貴殿の父、八郎太殿の斬死を御無念と思われると同じこと、父を覘う貴殿の在所を知っては、某として、御見逃し仕る訳には参らぬ。討たれるか、討つか、千に一つの勝負を決しとうござる」
月丸の言葉は静かであったが、その決心は、眼の色に輝いていた。