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なんごくたいへいき

南国太平記

直木 三十五

線上閱讀直木 三十五《南国太平記(なんごくたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 493,291 字 · 991 頁

青空文庫

それは、もう、寛之助の死を知り、心ならずも、妻を離別しなくてはならぬ人の悲しい態度であった。

母としての七瀬は、三人の子にとって、父八郎太よりも、親しみが多かった。そして、英姫の侍女としての七瀬は、その儕輩よりも群を抜いていた。八郎太の妻としては、或いは過ぎたくらいの賢夫人であった。それだけに、今度のことの責任は重かった。それだけに、八郎太としては、容赦の無い処分を妻に加えて、自分の正しさを家中へ、示さなくてはならなかった。

「寛之助様のことは――」

「聞いた」

八郎太は、なお、牡丹を見たままであった。

「母上のことにつきまして――」

「お前は、文武にいそしんでおればよい」

父は振向いた。

「髪が乱れて――何かしたの?」

「掏摸を懲らしてやりました」

「下らぬ真似をするのでない」

八郎太は、これだけいうと、又庭の方へじっと眼をやった。小太郎には、父の苦しさ、悲しさが、十分にわかっていた。そして、母の苦しさ、悲しさもわかっていた。

(益満のいった手段を――)

と、思った時、玄関で

「お母様」

と、姉娘綱手の声――すぐ、つづいて妹深雪の、笑い声がした。八郎太は、眉一つ動かさなかった。