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なんごくたいへいき
南国太平記
直木 三十五
線上閱讀直木 三十五《南国太平記(なんごくたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 493,291 字 · 991 頁
「それが、天下、国家と、何んの係りがあるのか?」
「酔うて枕す、美人の膝、醒めては握る、天下の権。楚の項羽が、虞美人を抱いて泣き、本朝では、源九郎と、静の故事など――外に向っては、天下の経綸を論じ、且、行うのは、大丈夫の本懐なり、又、使命でもござりまするが、内へ入って、喃々と、惚れた女の手玉にとられるのも、人間、男女の、生れた時よりの大道で、天下を救うのと、その是非、その大小、必ずしも、痴情を、卑しむことはできませぬ」
「それで――」
左源太は、うるさそうに、冷たく云った。
「それで――案じまするに、物に大小はござりませぬ。女を救うも、久光公を斬るも、徳川幕府を倒すのも、手前にとっては、同じ仕事でござりまして、しかも、これは、同じ時、一緒に、手をつけてもよろしく――久光公への悪逆をのみが、益満の仕事でなく、と申して、女のことばかりでもなく、天下の事のみでもなく、つまり、出でては、天下、入っては女、自由、自在、融通、無礙に働きたいと、存じおりまする。従って、浪士と交って、京師へ参ることもござりますれば、女と、遊里に彷徨っておることもござりましょう。益満は、そんな人間だと思召して、万事、お任せ下さるならば、多少の日日はかかりましても、心ず仕遂げて御覧に入れまする」