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なんごくたいへいき

南国太平記

直木 三十五

線上閱讀直木 三十五《南国太平記(なんごくたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 493,291 字 · 991 頁

青空文庫

「未だ、時刻には大分間があろう」

と、云うと

「はい――皆様が、お待ちかねで、ございますから――」

書院に待たせてある親族、朋輩、隣家の人達の、咳だの、話声だのが、微かに聞えて来るようであった。

「うむ」

五郎右衛門は、妻へ頷いてから、左太郎へ、手を出して

「坊」

と、いうと、左太郎も、すぐ手を出して、抱かれようとした。

「何が嬉しい? うむ、さあ、抱いてやろう、さあ」

父の胸に掴みかかるように、母を蹴り、身体を延して飛びついて行く左太郎の勢いに、女房は、よろめきながら

「しっかりと――抱いておもらい。これが――これが、今生での――」

と、いうと、涙で、途切れてしまった。召使の老女が

「奥様」

と、いったきり、畳の上へ、泣き伏してしまった。五郎右衛門は、子供の笑顔に、自分も、笑顔を、突きつけて

「お母様を、大切にして、えらい者になるのじゃぞ」

左太郎は、そういっている、父の、頬を掴んで

「とと、ああん」

と、叫びながら、身体を反らせた。それは、外へ出よう、という、いつもの、合図であった。

「今日は、馬には、乗れん。もう、暗いからの」

左太郎は、身体を反らして

「とと、馬」