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なんごくたいへいき
南国太平記
直木 三十五
線上閱讀直木 三十五《南国太平記(なんごくたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 493,291 字 · 991 頁
改めようにも、灯がとどかなかった。二人が、小門に佇んでいると、足音と、錠の音とがして、くぐりが開いた。
「御苦労に存じます」
「有難う、ござります」
二人は、御辞儀をしつづけて、急ぎ足に、曲ってしまった。
益満は、提灯を吹き消した。そして、木の枝へ引っかけた。二人は、手さぐりに――様子のわかっている邸の内を心に描きながら
(ここを曲って)
(この辺から、植込み)
と、中居間の方へ近づいて行った。益満は草を踏むと
「這って」
と、囁いた。庭へ入ってからは、歩くよりも、這った方が、危険が少かった。二人は立木を避け、植込みを廻り、飛び石を撫で、一尺ごとに、手をのばして、手に触れるものを調べながら、御居間の方へ近づいた。灯の影もなく、人声もなく、ただ、真暗闇の世界であった。
「山一のことが――思い出される」
益満が囁いた。小太郎は、床下へ入った時に、そのことを思い出していた。
山一とは、山田一郎右衛門のことであった。高野山に納めてあった島津家久の木像を、高野山の僧侶が床下へ隠して、紛失したと称した事件があった。島津家が、窮乏の極の時、祠堂金を与えなかったから僧侶が意地の悪い事をしたのである。