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なんごくたいへいき

南国太平記

直木 三十五

線上閱讀直木 三十五《南国太平記(なんごくたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 493,291 字 · 991 頁

青空文庫

はなかった。そんな人間では、修行のしきれる呪術ではなかった。

「薬草取りは?」

玄白斎が、戻り道の方へ歩きかけたので、和田が、こう声をかけると

「止めた――戻ろう」

と、玄白斎は答えて、もう、左右の草叢へは、何んの注意もしないで、うつむき勝ちに、足早に歩き出した。和田は玄白斎の心がわからないらしく、忠実に、草の中の薬草の有無を、杖の先で探しながら、黙ってついて行った。

だんだん木が疎になって、木床峠へ出る往来が近くなった。右手の前方に、桜島が、朗らかな初夏の空に、ゆるやかに煙をあげていた。

「仁十」

「はい」

玄白斎は、こういったまま、また、暫く黙っていた。

「先生――何か?」

「ふむ――事によると、のう」

何を考えているのか、玄白斎は、なかなか語り出さなかった。

「何か、大事でも――」

「うむ、容易ならぬ企てがあると、わしは思うが」

と、いって、突然、振向いて

「近々に、牧に逢ったかの」

「一向に――」

「噂をきかぬか」

「ただ、江戸へ参られました、と、それだけより存じません」

牧仲太郎とは、玄白斎の後継者で、牧に職を譲って、玄白斎は、隠居をしているのであった。

「もしか、牧が――」