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なんごくたいへいき

南国太平記

直木 三十五

線上閱讀直木 三十五《南国太平記(なんごくたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 493,291 字 · 991 頁

青空文庫

心正しきものの行う兵道の修法は、百万の勇士にも優り、心邪なる者の修法は、百万の悪鬼にも等しいと――牧、憶えておろうな。何うじゃ」

玄白斎は、静かに、だが、整然として、鋭く、牧に迫った。

牧は、俯向いたままで、微かに、肩で呼吸をしていた。何ういう苦行をしたのか? 玄白斎が、想像していた牧とは、まるで違った疲労した牧であった。一人の命を縮めると、己の命を三年縮めるというが、この疲労、このやつれは、三年や、五年でなく、既に、死病にかかっている人の姿であった。玄白斎は、高木と、和田の前で、自分の気の弱さを見せたくなかったが、もし二人がいなかったなら、この愛弟子の肩を抱き、手を執って

「牧、何うした?」

と、慰めてやりたかった。自分の立場として、兵道守護の務として、牧を、こうして咎めたが、心の中では

(牧が、うまく返辞をしてくれたなら)

と、祈っていた。和田が

「牧殿――御返答は?」

牧は、眼を閉じて、手を膝へついて俯向いたまま、未だ答えなかった。山内が、咳をして

「手間取るのう」

と、土間で、無遠慮なことをいった。

「お答え申し上げます」

牧は、静かに顔を擡げて、澄んだ眼で、玄白斎を見た。