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なんごくたいへいき

南国太平記

直木 三十五

線上閱讀直木 三十五《南国太平記(なんごくたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 493,291 字 · 991 頁

青空文庫

(左だ)

小太郎は、眼を閉じて、父の顔に祈り、義観に念じ、この山の仏に、神に

(人影が見えますよう――それが、牧であるよう)

と、祈った。そして、じりじり、視線を、左へ、左へ――草原の線の重なり、その上に頂を出している森、その後方の山々、その下の平野、村々――小太郎は、左へ左へ見て行くうちに、ちらっと、黒点が、眼に入った。小太郎は眼を閉じた。そして

(人であってくれるよう。牧であってくれるよう)

心臓が、喘いできた。身体中が緊張に顫えてきた。神を念じて、眼を開くと、じっと、凝視めた。三人の人影が、草の中にうずくまっていた。

「あれで、修法が、出来るかしら――出来るとしても、験があろうか」

草の中へ、腰をおろして、吸殻を、足で擦り潰しながら一人が云った。

「あろうと、なかろうと、ああああっ」

山内は、大きく欠伸をして

「つくづく、厭になって参った。これが、京の藩邸詰なら、弁慶ではないが、夜な夜な出でては、人が斬れそうだ。今度は、所司代が、会津の容保と、更るそうだが、此奴は、きっと、市中取締が手厳しくなろう。すると、諸国浪士共が、じっとしていまいし――」

一人は、その少し下、右手の方に、形ばかりの祭壇を作って、石の如く、うずくまっている牧仲太郎を、じっと、眺めていたが