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なんごくたいへいき
南国太平記
直木 三十五
線上閱讀直木 三十五《南国太平記(なんごくたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 493,291 字 · 991 頁
小太郎は、首を、脇にかかえて、立上った。下の方に、警固の侍が、まだ刀を持ったまま、呆然として立っていた。
「牧を、手厚く、葬ってやってもらいたい」
小太郎は、こう叫ぶと、何故か――それは目的を果たしたことに対する嬉しさの涙であると共に、牧への手向けの涙でもあったか――薄い憐れさが、湧いて来て、涙が浮んだ。だが
(これから、斉彬公のために尽すのだ――こうして――牧を討ってしまえば、哲丸様も、島津も、安泰だ。益満は待っておろう――妹よ、これで、仙波の家は立派に立つぞ。牧の首は、ここにある。家中の正義派は、斉彬公のために、何んなに、己をほめてくれるか?――一刻も早く、京都へ、京都へ)
小太郎は、夕陽の落ちて行く空の中を、走り出した。京都の方角の山々は、暗くなりかけていた。
馬の蹄の音が、人々も、梢も、小鳥も、沈黙している山荘の中へ、微かに、響いて来た。人々は、その蹄の音の、あわただしさに、一寸、心臓を押されたが、吉之助も、その外の人々も、俯向いているだけであった。然し、心の中では
(何かの異変であろうかな、今時分、あの、けたたましさは?)
と、感じた。だが、今まで、吉之助が、一蔵が、話をし、説いてきた斉彬の言葉に対し、何うもいいようのない人々は、自分の命にかけて、起そうと意気込んで来たことが、斉彬の、その一言で、