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おおおかえちぜん
大岡越前
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《大岡越前(おおおかえちぜん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 218,436 字 · 437 頁
親分……」
「なんだ、亀」
「もう江戸もよい程に見限りをつけて、いつも親分が、時節が来たらと、口ぐせにいっている西国の何とか島へ、もうそろそろ落ちて行こうじゃありませんか」
「うム、今年ゃあ、行こう。だが、もすこし、持病の喘息が快くならねえことには、おれの体がうごけねえ」
「いったい、その島っていうなあ、どこなんです」
「そいつあ、たれにも、口外できない仲間の約束になっている。彼方へ行くまで、勘弁しねえ」
「いつも、そういうから、訊かずにいるんだが、仲間掟と仰っしゃって、いったい、ここにいる三人などは、仲間内には入らねえわけなんですか」
「島の仲間というのは、密貿易だけの仲間をいうんだ。悪くとるなよ。あの仲間の頭領というのは、ケチな江戸や浪華を稼ぎ場としているのとはちがって、ちっとケタちがいの大物だ」
「なるほどね。それじゃこちとらは、陪臣の又家来ぐらいなとこなんで」
「まあ、そんなわけだろう。だが、将軍家が代替りもせずに、もうすこし、犬公方綱吉の、人間失格時代と、おめでたい自滅世相の代がつづけば、おめえたちにも、一役買わせて、もっともっと、おもしろい時世を見せてやれたんだが……惜しいことに、馬鹿将軍が死んでしまい、今の、八代吉宗になっちまったので、その方は、もう見込みがねえ」