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だいぼさつとうげ

大菩薩峠13

中里 介山

線上閱讀中里 介山《大菩薩峠13(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 349,705 字 · 678 頁

青空文庫

「料理屋へ来て、酒を飲むなと言われたのは初めてだ」

「はい、殿様は酒乱の癖がおありになるから、お酒のお言いつけがあっても、なるべく差上げないようにと、おっかさんから言いつかっておりますえ」

「ふん、なるほど、貴様は正直者だ、言いつかった通りを、客の前で言ってしまうのは、正直者でもあり、新前でもあるな。いったい、いつ、どっちの方から、この店へ来た」

「はい――もとは両国にもおりましたが、近頃は田舎廻りをしておりました」

こう言われてみると、その昔、女軽業の一行のうちの人気者で、甲州一蓮寺の興行から行方不明になった、力持のおせいさんという者があったことを、知る人は知っている。

その時分には、神尾主膳も甲府にいた。主膳としても、あの女軽業を見物に行った覚えのあることは確かだが、その一座の中の看板に、現在眼の前にいる怪物が、客を呼んでいたかいなかったか、そんなことの記憶までは残ろうはずもない。この怪物の方でも、当時の見物の中に、あの時お微行で通った彼地のお歴々としてのこのお客様の姿形を、頭に残していようはずはないにきまっている。

主膳は、この思いがけない大女の出現と、その大女が、酒をすすめるためでなく、禁酒の監視役として出張して来たような態度に、相当興をさまさないわけにはゆきません。