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だいぼさつとうげ
大菩薩峠13
中里 介山
線上閱讀中里 介山《大菩薩峠13(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 349,705 字 · 678 頁
十九
まず、書の巧拙や、筆法の吟味は論外として、その覇気遊逸して、筆端竜蛇を走らす体の勢いに、さすがの白雲が、すっかり気を呑まれてしまった形です。
そうして、白眼で見ていた眼が躍り出し、危うく酒杯を取落そうとして見ていると、そんなことを眼中に置かず、さっさと、走らせた筆のあとを、文字通りに読んでみると、
平潟湾、勿来関(平潟の湾、勿来の関)
石路索廻巌洞間(石路索め廻る巌洞の間)
怒濤如雷噴雷起(怒濤雷の如く噴雷起る)
淘去淘来海噬山(淘り去り淘り来り海、山を噬む)
地形雄偉冠東奥(地形の雄偉、東奥に冠たり)
…………………
一字一句もまた、その筆勢にかなう磊嵬たる意気の噴出でないものはありません。
もとより古人の詩ではない。誰か、近代人の作を借りて来たのか、どうもその手に入った書きぶりを見ていると、他の作を借りて、自家の磊嵬に濺ぐものとも思われないのです。
してみれば、これは自作だ、この年で――二十歳前後です――この筆で、この作で、この意気、これは全くすばらしい男だと、白雲が舌を捲いてしまって、今度は、改めて、拳を膝に置いて、その武士の横顔を、穴のあくほど睨みつけたものです。