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しんぺんちゅうしんぐら

新編忠臣蔵

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新編忠臣蔵(しんぺんちゅうしんぐら)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 337,181 字 · 676 頁

青空文庫

『清水っ――』

思わずそう呼んでしまって、

『出かけようじゃないか』

と、先に軒先を離れた。

伊皿子坂を、大股に登って行く木村丈八に後から追いついて行って、一学は笑いながらたしなめた。

『不覚だぞ、木村』

『なぜ』

『清水などと呼んだではないか』

『わかるものか』

『それはまだしも、冷光院殿前朝散太夫のお石碑の上へ、貴様め、汗くさい笠を脱いで置いたじゃないか。俺が、すぐ他へ取って置きかえたからよいようなものの、あの石屋に、少し頭があれば、赤穂浪人とはどうしても受けとらない所だ』

『そうか。それは失策だった』

『よくそんな事で、無事に、赤穂の始末が見届けて来られたな』

『江戸へ帰ったと思う気持が――つい気のゆるみになったとみえる』

『江戸は、猶更、油断がならない筈だ』

『先の動静は、此方で探るし、此方の行動は先でも探っていよう。吉良、上杉、浅野の三家を例えれば、ちょうど――蟷螂蝉を窺えば、野鳥蟷螂を狙う――というようなものだ。分らば分れ、俺たちにも、備えはある』

千坂兵部

この百日足らずのうちに、われながら白髪の殖えてきたのが分る。朝毎の手洗の折に、鏡を見るのも、この頃は怖ろしい気がする――。