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しんぺんちゅうしんぐら
新編忠臣蔵
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新編忠臣蔵(しんぺんちゅうしんぐら)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 337,181 字 · 676 頁
人の居る空家
旁、一度は訪れようと考えていた矢先、ちょうどよい、ここへは苦情の来ぬように俺が禁厭をして来てやる』
青貝柄だの、樫だの、朱柄だのの槍が十本程、一束にして藁苞に巻いて荷の中に立てかけてあった。八十右衛門は酔い頃に染まった顔を撫でながら、側へ行って、縄の束ねを切り解いた。そして、樫の九尺柄を一本抜いて、
『大津屋、かたく申しつけたぞ』
蔀の油障子を開けて、槍の穂から先に、往来へ出て行った。
人の居る空家
『度し難いたわけ揃いじゃ。――その馬鹿にもふたいろある。馬鹿に見える馬鹿と、馬鹿に見えない馬鹿と』
もう目ぼしい家財は何もない屋敷の内である。小者部屋の行燈と、食台と、安物の食器だけを残しておいて、大野九郎兵衛の家族は、身拵えまでして、そこに集まっていた。
『乳母、泣かすな』
杯を、伜の郡右衛門に渡しながら、九郎兵衛は、乳母の膝にいる疳のつよい孫の頭を見た。
『おぬしに似て、毛が赤い』
と笑った。
郡右衛門は、父へ酌して、
『孫は、たいがい、祖父に似るそうですな』
『わしに似れば、大したものだが、おそらく、これから浪人が何年つづくか知らんが、これで、凡物ができあがると大野家も、まあ、わしの代で峠じゃろうて』