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しんぺんちゅうしんぐら

新編忠臣蔵

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新編忠臣蔵(しんぺんちゅうしんぐら)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 337,181 字 · 676 頁

青空文庫

若き太守

『馬鹿云わっしゃい。何が御名誉というて、欣ぶことがあるものか。もし、饗応役の御下命とすれば、御当家に取っては、大痛事じゃよ。――勅使の接伴司、つまり御馳走人の御役は、一切合財、私費をもって弁じる掟になっている。だから、裕福と睨まれた諸侯か、御老中に憎まれた藩が、貧乏籤を引かされるのじゃ』と云った。

与五郎は、笑いながら、後耳で聞いていたが、助右は、怪しからぬという顔つきで、

『それが、平時の御奉公ではないか。御質素な藩風も、そういうときのお役に立とうが為だ。めでたい御大任をひかえて、痛事とは何を云うか』

『怒ったのか、助右殿』

『あたりまえだ』

『わるく思うな。わしはただ、お家の財政を案じて申しただけの事じゃよ。はははは、自分の懐中ではないから、お費用もまた、めでたいと云っておく分なら、随分、めでたいでも、お差閊えはないとしてよい』

と、田中は帳簿を片寄せて、気まずそうに、立ち去ってしまった。

若き太守

江戸城の帝鑑の間には、まだ朝の冷気が、清々とにおっていて、例日の諸侯たちも、登城の前であった。

ほどなく五刻半の時計が、奥深い所で、時を刻むと、五名の老中が、そろって、席に着いた。