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しんぺんちゅうしんぐら

新編忠臣蔵

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新編忠臣蔵(しんぺんちゅうしんぐら)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 337,181 字 · 676 頁

青空文庫

火よりも赤し

火よりも赤し

藤兵衛は、自分の冷静を誇るように、うすく笑顔をゆがめて、

『困った熱病でござるの。法の尊厳を承知して犯したとならば、なお悪いわ。――とにかく火鉢など相成らん。御納戸! ここに出ておる火鉢は、元の御蔵の内へ戻しておけ』

『いや、かまわぬ、出せっ』

常の伝右とは、まるで人が違ったように、叱して支えた。

『この伝右も、接伴役の一名じゃ。落度と相成ったら、腹を切る』

『おてまえ一人の腹で済めばよいが、お家に関わらぬ限りもない』

『断じて、伝右一身にひきうけまする。彼の衆の心事に、涙をそそがないでは、男のそそぐ涙はない。武士道は地に廃るわ。伝右の接伴役は、生命を賭して勤めておるもの、たとえ御家老のおさしずでも、無慈悲なお扱いには服せませぬ』

『これや、匙を投げた。――伝右どのは何うかしたとみえる。御納戸、御納戸、はよう仕舞え』

『かまわぬ、あちらの御座敷へ運べ』

『上役の命を』

『殿へ対して、伝右は、こう致すのが忠義と存じますれば』

飽くまで退かないのであった。

内蔵助たちの十七士が居る広間まで、その声はがんがん聞えていった。黙って、耳を澄ましていた赤穂の人々は、この時、細川家の一家士、堀内伝右衛門という名を、深く深く胸へ銘記していたようだった。