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しんぺんちゅうしんぐら
新編忠臣蔵
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新編忠臣蔵(しんぺんちゅうしんぐら)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 337,181 字 · 676 頁
陸の付人
田中貞四郎は、梯子段の下に立って、板場の見える窓のそばに、きき耳を欹てていたのである。
源蔵が、声をかけると、
『叱……』
と、胸に当てている扇子を横に振った。
出前持と、板前との、大きな話し声が手にとるように聞えてくる。それへ、帳場の者の横口も交って、
『じゃあ何か、今日置いて来た泥鰌は、勘定はとれねえのか』
『何しろ、要らねえと云うもんですからね』
『要らねえものなら、持って帰ればいいじゃねえか』
『それがですよ。多分、吉良様の若殿にちげえねえと思うんですが、半弓をこう持っていて、あっしの方へ、きりっと、向けたもんだ。射殺されちゃ堪らねえから、置いて逃げて来たんでさ』
『あの屋敷と来ちゃあ、横柄で、払い汚ねえ。揚句の果に半弓を向けて、出入商人を脅かすなんて馬鹿にしてやがる。勘定をもらって来い』
『俺あ、もう嫌だ』
『嫌だって、お屋敷は、今日限り、本所の方へ、移ってしまうというんじゃねえか。今日を過ぎると、又わざわざ、松坂町まで貰いに出なけれやならねえ。勘定を下げてくれなかったら、泥鰌を取っ返して来い』
『誰か、行ってくれ』
『意気地なしめ』
『おれだって、生命は惜しいや』