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しんぺんちゅうしんぐら
新編忠臣蔵
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新編忠臣蔵(しんぺんちゅうしんぐら)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 337,181 字 · 676 頁
『もう、お済みか』
無人は一同へ云って、
『惜しいこと致した。もう一足早ければ、末席に加えてもらうことが出来たのに』
『いや、遅いことはない。御法事はこれからじゃ。お待ちしよう、御墓拝をすまして参られるがよい』
『それでは相済まぬ。どうぞ、お先へ』
『いや、休息する家もこれから見つけることじゃ。誰か、探して来る間、どうせ待たねば相成らん』
『左様かの。では行って参ろうが……。安兵衛殿』
『はい』
『すまんが、御墓所まで、案内してくださらんか』
『承知しました。立派なお石碑が出来ております。御案内いたそう』
無人を導いて、堀部安兵衛はふたたび墓地へ引っ返した。
新しい石の前に坐って、無人は、長々と額ずいている。蝉の音が無数の墓に沁み入るように啼きぬいていて、樹蔭にはやや涼風がうごいて来た。
『安兵衛殿』
やがて顔をあげると、無人は、肩を四角く張って、
『そこへ坐ってもらおう』
と、自分の前の大地を指した。
『なんでござるか』
『ちと話したい儀がある。――君前で畏れ多いが』
『承りましょう』
『例の事だ』
無人はきびしい眼光を疑と安兵衛の顔に射向けた。満々たる不平が、すこし茶いろな眸の底から燃えている。