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しんぺんちゅうしんぐら

新編忠臣蔵

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新編忠臣蔵(しんぺんちゅうしんぐら)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 337,181 字 · 676 頁

青空文庫

『無為の日を』

と、何か次の問いを出しかけたが、伝八郎は頷いてさし控えた顔つきだった。そして、手土産の赤穂塩に眼を落し、

『御贈り物、有難く頂戴つかまつるぞ』

『あまり粗品にござりますが、近頃、赤穂表の知人から送りよこしました儘――』

『何よりの品じゃ。願わくば、お互に、世の中の塩と云わるる人間でありたいものよのう。――武士の塩、赤穂塩、これは珍重でござる』

押しいただいて、伝八郎はそれを、床の間へ置き直した。

朝だし、長居は迷惑と察しられて、源五右衛門は、すぐ、暇乞いをした。会えないつもりであったのが、こうして会えたことは望外な欣びだった。伝八郎もまだ話していたい様子であったが、登城の時刻が気になっているらしく見える。自身、玄関まで送って来て、

『又、折もあらば、立ち寄られい』

と、云った。

いやこれが恐らくは存命中のおわかれでしょう――と源五右衛門は、あやうく口に出すところだった。この人だけに、一言、それとなくでも真意の端を洩らしてもいい気がしたが、

『はい、御閑暇の節には、又何とぞ』

さりげなく云って門を出た。

憂いを吐く人

悪い者に出会ったと思ったのであろう、見て知らぬ振りを装いながら、編笠の人は、石町の辻をついと曲って行く。