輕讀日語

輕鬆讀懂日語經典作品

ja-reading.com

輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。

しんぺんちゅうしんぐら

新編忠臣蔵

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新編忠臣蔵(しんぺんちゅうしんぐら)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 337,181 字 · 676 頁

青空文庫

がなかった。

同僚の一人が、頻りと探し廻っていると、柳の間の柱に凭れて、凝と何か考えこんでいる。

『梶川どの!』

呼びかけると、

『お……』

振り向いた睫毛が、キラと、涙に光っていた。

気のつかない同僚は、彼の肩を打って、

『お目出度う!』

と、云った。

梶川は、白髪交じりの鬢を外向けて、

『――この年で、出世も、要らぬことでござる』

『とに角、こんな大運は、生涯にも、滅多にあるものじゃない、御羨望に堪えぬ。――いずれ御披露には、招ばれて参るぞ』

『…………』

『そうそう、用事を忘れていた。桂昌院様が、お召しです。すぐ参られい』

『風邪気味か、少々、悪寒をおぼえて、お役儀の怠慢、おゆるし下さい。……ただ今、すぐに行きまする』

同僚の者が、先に走り去っても、彼はまだそこの柱から離れようとしなかった。辺りの樹々にも、七刻ごろの日蔭が濃くなりかけていた。ちょうど、大玄関の脇にあたるお坊主部屋の前まで、今、一挺の駕籠が舁ぎ込まれたのを彼は見ていた。間もなく、数名の武士が、網をかけた駕籠を囲んで、粛々と平河口の方へ出て行った。

『ああ、なんの目出度い事があろうぞ。――内匠頭殿の胸の裡を思えば……』