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しゅんでい
春泥・三の酉
久保田 万太郎
線上閱讀久保田 万太郎《春泥・三の酉(しゅんでい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 86,075 字 · 173 頁
――雪は止んだが、空はまだ暗く陰気に、未練たらしく灰いろに曇っていた。――時間のわりにつもりようの早かった……ということは、それだけよけいに降り、それだけよけいにつもった昨夜の美しい銀世界のさまはすでになく、どこをみても沼のようなぬかるみの、しかも無慚に蹴返されふみかえされた泥の中を、若い役者らしい見得もかざりもなく、不恰好なゴムの長靴で勇敢にかれはあるいて行った。
途中、かれは、公衆電話で「矢の倉」の師匠のところへ電話をかけた。女中が出て来て「先生は御旅行中でございます。」といった。ではお嬢さんはというと「お嬢さんも御一緒でございます。」と木で鼻をくゝるすげないあいさつだった。かれは寂しい気がした。……と同時に、まァよかった。――なぜかそういうほッとした気がした。
小倉の顔を見るとすぐかれはそれをいった。
「旅行中だ?」小倉は眉を顰めるようにした。「で、どこへ行ったといった?」
「それは聞かなかったが、お嬢さんと一しょというんだから、いつものまた修善寺へでも行ったんだろう。」
「何日行ったといった?」
「それも聞かなかった。」
「何にもならないじゃァねえか、それじゃァ。