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しゅんでい
春泥・三の酉
久保田 万太郎
線上閱讀久保田 万太郎《春泥・三の酉(しゅんでい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 86,075 字 · 173 頁
五
……出来ねえものを無理にやれとはいわねえ。――だが、それじゃァこっちの芝居が出来ねえ。」
……つねはそうした荒い物言をする由良ではなかった。たゞ舞台のことについてだけまれにそう癇癪を起して巻舌になった。同時にそうなるとこれ何う車を横に押すか分らなかった。――誰も、たゞ、手をつかね、鳴りをしずめてその雲行の険しさをみまもるばかりだった。
「軽業師を呼んで来ねえ、軽業師を。――軽業師なら出来るだろう。」
とゞ話はそこまでこじれて行った。そこまで由良はつむじを曲げた。――そのときたまらなくなってかれは飛出した。――夢中でかれはその役をやらしてくれと由良のまえにいった。
「出来るか、お前に?」
「出来ます。」
「きッとか?」
「へえ、きッと。」
その晩からかれはうちへ帰らなかった。一人芝居に残って稽古をした。蝋燭をつけて三階で夜の明けるまで一心に稽古した。
五
一心にそう稽古した甲斐はあってみごとにかれは成功した。一座のものさえ驚くようなケレンをかれはやってみせた。ことに最後のイルカ飛。――立っている人間を一しょに三人飛越すくだりについては、初日にみて、由良にしてその鮮さを激賞した。