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しゅんでい

春泥・三の酉

久保田 万太郎

線上閱讀久保田 万太郎《春泥・三の酉(しゅんでい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 86,075 字 · 173 頁

青空文庫

九

」

九

……で、これではいけないと急に狼狽てゝ、とゞ大部屋のもの二三人があたりの闇を幸い、丈なす草のしげみにかくれてほんとうの虫笛をふくことになった。――そのなかの一人にえらばれた三浦だった。

「新参のなさけなさには嫌といえねえ。――そこがいまの大部屋と違うところで、その時分そんなことをいおうものなら、生意気な野郎だ、ふざけた畜生だで折角辛苦して入った一座をたちまちクビだ。――仕方がねえと外の奴らのいゝ機嫌にくらい酔ってる中で、さんだらぼッちを持って俺ァ草の中へもぐずりこんだ。」

「何にしたんだ、さんだらぼッちを?」

「尻へしいたのよ。――そのうえにつぐなんで、一ト晩中、蚊にくわれながらピイ/\やったのよ。」

「で、うまく行ったのか、それ?」

「うまく行くも行かねえもねえ、大ていの奴は感づいて擽ッたそうに笑って行きゃァがる。――なかで人をくった奴ァ、すました面で、まァ芝居のようだこと、だなんぞ聞えよがしにそんなことをいって行きゃァがる。」

「それじゃァ引っ込がつかないじゃァないか?」

「でも、はじめのうちは、それも奉公のうちと思って気が張っていた。――だん/\夜の更けるにつれて眠くはなる、腹はへる、冷え上っては来る。