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しゅんでい
春泥・三の酉
久保田 万太郎
線上閱讀久保田 万太郎《春泥・三の酉(しゅんでい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 86,075 字 · 173 頁
二
……だからその半年だけ側にいなかったきり、あとはずっと、どんなことがあっても決してもうその手もとを離れなかった。……
二
ことのついでにいってしまえば、もと西巻は、日本橋の石町、銀町、伝馬町……その界隈を担いであるくぼてふりの肴やだった。お定りの芝居好き、どこの座でもあいて三日目までにみなければ気がすまず、五代目の弁天小僧をみて自分の腕に桜のほりものをする料簡になったり、得意さきでおだてられるまゝ稼業そっちのけに声色をつかって聞かせたりしていたうちはまだよかった、それが嵩じて「役者になりたい」になり、伝手をもとめて二三人の旧役者のところへ弟子人をたのんだ。一人のところでは肴やというこれまでの稼業がいけないといって断られ、一人のところでは体よくうやむやに追返され、一人のところではその不心得を懇々とそういっても親切にさとされた。一時はそれであきらめる気になったものゝ、妄執の雲のほんとうにまだふき晴れなかった証拠には、ある日、朝、いつものように河岸へ買出しに行ったとき、たま/\その問屋の店さきで何ごゝろなく取上げた新聞のある報道がかれのその望みをたちまちまた燃えあがらせた。