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しゅんでい

春泥・三の酉

久保田 万太郎

線上閱讀久保田 万太郎《春泥・三の酉(しゅんでい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 86,075 字 · 173 頁

青空文庫

」

「と、じゃァ、矢っ張……」

「かりにそうなったっていゝじゃァねえか? ――俺たちには『矢の倉』というものがついているんだ。――『矢の倉』というしっかりした師匠がついているんだ。――会社と縁が切れたって天下に仕打は大ぜいいるんだ。」

「それは――それはそうだけれど……」

「師匠にさえくッついていれば、あの師匠、決してそんな座員を路頭に迷わせるようなこたァしねえ。――喰ってく位のかしきはどんなことをしたってつけてくれる。――いまゝでのようにたゞいう目の出なくなるばかりだ。」

「…………」

そのまゝしばらく話は途切れた。――土橋をわたり……土橋の下には枯れた蓮の太い茎がらちもなく水に潰っていた。……障子の閉ったお成座敷のまえを通って、三人は、散在しているあずまやの、そのなかの一つにやがて腰を下ろした。――そこには競い立った梅の梢……そうした梅の枝々がみえない影をしら/″\とそのあたりに落していた。

「お、鶴がいるぜ、鶴が?」三浦はどんなものでもみつけたように「むかしァいなかった。むかしァあんなものはいなかったぜ。」

そういいながらすぐまたその檻のほうへ立って行った。