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しゅんでい
春泥・三の酉
久保田 万太郎
線上閱讀久保田 万太郎《春泥・三の酉(しゅんでい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 86,075 字 · 173 頁
――あなたがたのようなお若い方から御覧になったら、いゝえ、どうでもいゝことゝしかお思いになれないかも知れませんが……」
「うたむら」の主人はわらって猪口をふくんだ。
「いゝえ、あたくしたちにしたって、それは。――矢っ張それは春なんぞ、出を着た白襟の芸妓衆のそれに乗って通るのを、いゝなァ、綺麗だなァとうれしがってまいった玉ですから。」
「それさえこのごろは、新橋なんぞでは、三人と四人一しょだと円タクで運んでもらう。――そのほうが手ッとり早くもあれば、第一けいざいに上るといいます。――なるほど、それは、そうすれば俥夫にやる御祝儀だけで事が足ります。――あながちそれを悪口とばかりいってしまえないというものは、いまの若い妓たちは、俥へ乗るのをあんまりうれしがらないかたちがあります。――春でも、ですから、出を着たって以前のようにむき出しには乗りません。ちゃんと、みんな幌をかけさせます。」
「一つにはしかし寒いんで……」
「いえ、御尤も……」
かるくそれを外して「うたむら」の主人は鍋……といってもこのほうは鮟鱇鍋……のなかへ箸を入れた。――話が切れると、おもての油障子に、さら、さら、とふりかけるみぞれの音がしのびやかに聞えた。