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さんごくし

三国志

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《三国志(さんごくし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 161,356 字 · 323 頁

青空文庫

「汝、この国の恩を忘れたか」

辛毘は悶絶して、兵に抱えられたまま、後陣へひき退がった。

けれど彼は、その無念をはらすため、審配の甥にあたる審栄へ、矢文を送って、首尾よく内応の約をむすび、とうとう西門の一部を、審栄の手で中から開かせることに成功した。

冀州の本城は、ここに破れた。滔々、濁水をこえて、曹軍は内城にふみ入った。審配は最後まで善戦したが力尽き捕えられた。

曹操は、彼に苦しめられたことの大きかっただけに、彼の人物を惜しんで、

「予に仕えぬか」と、いった。

すると辛毘が、この者のために、自分の妻子一族四十何名が殺されている。ねがわくは、この者の首を自分に与えられたいと側からいった。

審配は、聞くと、その二人に対して、毅然とこう答えた。

「生きては袁氏の臣、死しては袁氏の鬼たらんこそ、自分の本望である。阿諛軽薄の辛毘ごときと同視されるさえけがらわしい。すみやかに斬れッ」

云い放ちながら、歩むこと七歩――曹操の眼くばせに、刑刀を払った武士が飛びかかる。

「待て!」

と一喝し、静かに、袁氏の廟地を拝して後、従容と首を授けた。

野に真人あり

一

亡国の最後をかざる忠臣ほど、あわれにも悲壮なものはない。