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さんごくし

三国志

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《三国志(さんごくし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 161,356 字 · 323 頁

青空文庫

琴を弾く高士

一

ふと、駒を止めた。

茫乎として、野末の夕霧を見まわした。そして過去と未来をつなぐ一すじの道に、果てなき迷いと嘆息を抱いた。

すると、彼方から笛の音が聞えた。やがて夕霧の裡から近づいてきたのは、牛の背にまたがった一童子である。玄徳はすれちがいながら童子の境遇をうらやましく思った。

――と、童子はふり返って、

「将軍将軍。もしやあなたは、そのむかし黄巾の賊を平げ、近頃は荊州にいるという噂の劉予州様とちがいますか」と、いきなり訊ねた。

玄徳は驚きの目をみはって、

「はて、かく草深い里の童が、どうしてわが名を存じておるのか。いかにも自分は劉備玄徳であるが……」

「あっ、やはりそうでしたか。私の仕えている師父が、常に客と話すのを聞いていたので、劉予州とは、どんな人かと、日頃、胸に描いていましたところ、いまあなたの耳をみると、人並み優れて大きいので、さては、大耳子と綽名のある玄徳様ではないかと思いついたんです」

「して、そちの師父とは、如何なる人か」

「――司馬徽、字は徳操。また道号を水鏡先生と申されます。生れは潁川ですから黄巾の乱なども、よく見聞しておいでになります」