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さんごくし

三国志

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《三国志(さんごくし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 161,356 字 · 323 頁

青空文庫

孫権立つ

一

見よわが宝剣の威を」

と、戛然、抜き払った一閃の下に、于吉の首を刎ねてしまった。

日輪は赫々と空にありながら、また沛然と雨が降りだした。怪しんで人々が天を仰ぐと、一朶の黒雲のなかに、于吉の影が寝ているように見えた。

孫策はその夕方頃から、どうもすこし容子が変であった。眼は赤く血ばしり、発熱気味に見うけられた。

孫権立つ

一

「あっ、何だろう?」

宿直の人々は、びっくりした。真夜半である。燭が白々と、もう四更に近い頃。

寝殿の帳裡ふかく、突然、孫策の声らしく、つづけさまに絶叫がもれた。すさまじい物音もする。

「何事?」と、典医や武士も馳けつけて行った。――が、孫策は見えなかった。

「オオ、ここだ。ここに仆れておいでになる」

見れば、孫策は、牀を離れて床のうえに俯伏していた。しかも、手には剣の鞘を払って。

その前にある錦の垂帳はズタズタに斬りさかれていた。

宿直の武士がかかえて牀にうつし、典医が薬を与えると、孫策はくわっと眼をみひらいたが、昼間とは、眸のひかりがまるでちがっていた。

「于吉め! 妖爺めッ。どこへ失せたか」

口走るのである。明らかに、ただならぬ症状であった。