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なんごくたいへいき

南国太平記

直木 三十五

線上閱讀直木 三十五《南国太平記(なんごくたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 493,291 字 · 991 頁

青空文庫

「忝ない」

と、投げつけるようにいって、もう、灼い陽の下へ出ていた。

暑い、この頃の陽の下を旅する人は少いから、戻り馬も通らなかった。和田は、俯向いて、口を開きながら、眉を歪めて、苦しそうに、小走りに走りつづけた。谷山の村へ入って、茶店へ来たが、いつも、茶店の脇の、大きい欅の木の下に、一二疋ずついる馬が、一疋も見えないので、欅の下蔭は、淋しかった。

(出払いかしら)

と、思うと、失望と、怒りを感じて

「婆さん」

と、茶店の奥へ怒鳴った。

「馬は?」

「馬かえ」

婆は、いつも、馬のいるところに、影が無いから、聞かずともわかっていそうなものだ、というような態度で

「居りましねえが」

「馬子は?」

「馬子も、居りましねえ」

和田は、この婆が、意地悪く、馬を皆、隠したように感じた。

「急用だに――」

「そのうちに、戻りましょう」

和田は、渇と、疲れに耐えられなくなって、腰をかけた。

「水を一杯」

「水は悪うござるよ。熱い茶の方が――」

「水でよい」

竈のところから、爺が、顔を出して

「つい、今し方まで、四五疋遊んでおりましたがのう。御武家が四人、急ぐからと――つい今し方、乗って行かっしゃりましたよ。