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なんごくたいへいき

南国太平記

直木 三十五

線上閱讀直木 三十五《南国太平記(なんごくたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 493,291 字 · 991 頁

青空文庫

心当りのあるお嬢さんが御通行だ」

と、一人は、綱手の顔を見て、連衆の耳を引張って、道をあけた。

「お嬢さん、首がござんせんぜ、判りますかい」

「黙って、臍の上に、ほくろがあるんだ」

「おやっ、手前知ってるのか」

「毎朝、銭湯で逢わあ。臍ぼくろって、臍の上のほくろは、首を切られるか、切腹するかにきまったもんだ。ちゃんと、三世相に出てらあ」

一人は、小声で

「どっちかの、御亭主だぜ。気の毒に」

「この間抜け、一人は生娘だ」

「生娘だって、亭主持があらあ――ほうら、娘の方が紙を引っ張った」

「読めるかしら」

「手前たあ、学文がちがわあ」

「何を、こきあがる。俺だって、ちゃんと読んでらあ。斬られた奴は、一木ぬ七って人だ」

綱手と、七瀬とは、紙切を読んで、頷き合った。その時、人垣の外の人々が

「来た来た、又来た」

と、どよめいた。二人は、立上って、人々の眺めている方を爪立ちして見てみた。五人の侍が、一人の手負らしい、のを、駕の中へ入れて、灰色の顔をしながら、急ぎ足に近づいて来た。

「あれは?」

「ええ、あの方は――」

二人とも、名は知らないが、同藩中で、顔見知りの人が一人いた。七瀬がすぐ近づこうとした。