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なんごくたいへいき

南国太平記

直木 三十五

線上閱讀直木 三十五《南国太平記(なんごくたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 493,291 字 · 991 頁

青空文庫

人足が、その力によろめいて、歩みをゆるめた時、最先の追手は一間余りのところまで迫って

「上意」

と、叫んだ。

その瞬間だった、池上の脚が、手摺にかかり、左手で刀を押え、右手を引く、と――見る刹那

「ええいっ」

追手は、斬るよりも、突くよりも、周章てて、身体を避けた。それは、余りに思いがけない池上の奇襲だったからだ。池上は、猛犬の飛びかかるように、自分の輦台を蹴って、追手の輦台へ、飛び込んだ。

人足が、顔を歪めた瞬間、輦台が、傾いた。と、同時に、池上の体当りを食った追手の一人は、脚を天へ上げて、白い飛沫を、つづく味方へ浴びせかけて、川の中に陥った。

「たたっ」

人足は、顔を歪めて、肩へ手を当てた。そして、輦台を持ち直した。池上は、輦台が傾いたので、倒れかかったが、手摺へつかまって、立上りかけると

「うぬっ」

白く閃くものが、顔から、二三尺のところにあった。池上は立上った。

「弱ったな、土州」

「やっつけるか」

と、人足が、叫んでいるのを、聞きながら、池上は、左右の追手へ

「輦台の上での勝負は珍しい。今度は、貴殿のところへ、源義経、八艘飛び」

と、微笑して、手摺へ、足をかけた。