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なんごくたいへいき

南国太平記

直木 三十五

線上閱讀直木 三十五《南国太平記(なんごくたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 493,291 字 · 991 頁

青空文庫

それは、二人でなかった。

「父上、話声が――」

二人は、立止まった。八郎太は、黙って、鎖鉢巻を当てた。そして、その上から、手拭をかぶった。小太郎も、それに見倣った。右に、左に折れ曲る急坂を、二人は、静かに、ゆっくりと

「急ぐでないぞ、呼吸が乱れては闘えぬぞよ」

と、いいつつ――それでも、時々、肩で息をしながら登って行った。小太郎が、目を上げると、遥かの、熊笹の中に、半身を見せて、一人の侍が立っていた。小太郎が、じっと凝視めると、向うも、こっちを眺めていたが、何か合図をしたと見えて、すぐ二人になった。そして、二人になったかと思うと、右手の山蔭へ消えてしまった。

「居るのう」

「半町――」

と、いった途端

「待てっ――待てっ」

遠くで、人影も見せずに、こう叫びながら――然し、すぐ足音が、寂寞を破って、乱れ近づいた。小太郎も、八郎太も、羽織を笹の上へ棄てた。足場を計った。二人で対手をはさみ討てるように、左右に分れて、径に向い合った。すぐ曲り角から、四人の姿が、現れて、一人が、こっちを見ると

「何故、登った、降りろ」

と、叫んだ。四人とも、襷がけで、支度をしていた。