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なんごくたいへいき

南国太平記

直木 三十五

線上閱讀直木 三十五《南国太平記(なんごくたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 493,291 字 · 991 頁

青空文庫

斎木と、眼を合して、貴島らの二人は、その後方へつづいた。

小太郎は、伝教大師の石室を、背にして、血塗れになっていた。半顔は、人の血と、己の血で染まっていたし、着物は、切り裂かれて、芭蕉の葉のようであった。瞳は、もう力なく、動かなくなって、すぐにも気を失いそうだった。だが、一人でも、近づくと、凄い光を放って睨みつけた。

突き出している刀尖が、時々下った。腕が、もう、刀を支えておれぬらしかった。山内が

「さ、引導、渡してくれる――南無阿弥陀仏、御大師様の廟で殺されるからは、極楽往生疑いなし、南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏。一同の者、よく見い、人を斬るのは、こう斬るのじゃ」

上段に振りかぶった。小太郎は、石に、背をつけたまま、だるそうに、正眼に構えた。牧が

「不憫な奴じゃ」

と、近づいて呟いた。山内は、ちらっと、その方を見ると、もう一足、小太郎に近づいた。そして、左右の浪人へ

「よく見い。真向から二つになるぞ」

と、いった。小太郎は、半眼で、じっと、構えたまま、身動きもできなくなっていた。

「逃げえ、小太郎――犬死してくれるな」

それは、墓穴の中から、死人が呼びかけたような声であった。