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なんごくたいへいき
南国太平記
直木 三十五
線上閱讀直木 三十五《南国太平記(なんごくたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 493,291 字 · 991 頁
(ちえっ)
と、心の中で、舌打ちをして、生若い侍から侮辱されたように感じて、憤りが湧いてきた。
(小僧のくせに、味な真似を――)
と、思った。そして、手を握られたまま、小太郎の眼と、じっと、睨み合っていた。振切って、横っ面を、一つなぐって、逃げてやろう、と思った。だが、右手を、十分に取られていて、勝手が悪かったので
「済みません」
と、油断させておいて――とも、思ったが、こんな小僧に、詫るのも癪であった。
「何うするんでえ」
庄吉は、睨みつけた。小太郎は、微笑した。そして、左手の書物を、静かに、懐へ入れて
「さあ、何う致そうかの」
と、答えた。
庄吉も、微笑した。
「江戸は物騒だから、気をつけな」
「不埓者っ」
小太郎の顔に、さっと、血が動いた。
「何っ?」
力任せに引く手首を、ぐっと、内へ折り曲げると共に、庄吉の手首から、頭の中まで、血の管、筋骨を、一時に引きちぎるような痛みが、走った。
(手首が折れる)
と、感じ
(商売が、できなくなる)
と、頭へ閃いた刹那、庄吉は、若僧の小太郎に、恐ろしさを覚え、怯じけ心を感じたが、その瞬間――ぽんと、鈍い、低い音がして、庄吉の顔が、灰土色に変じた。