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なんごくたいへいき

南国太平記

直木 三十五

線上閱讀直木 三十五《南国太平記(なんごくたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 493,291 字 · 991 頁

青空文庫

それは、大きく、鋭く、月丸の肚の中を、拳で突き上げるように、響いた。頭の中へは、ぐゎん、という音と共に、いっぱいに拡がった。それは、声でなくて、人間の内臓を、頭の中を、その内部から撲ったようなものだった。

月丸は、よろめいた。そして、一気に、崖を飛び降りた。そして、立木にぶっつかりつつ、凹地に躓きつつ、走り出した。

魔物の住家に、いるように感じられた。寺へ戻って来たが、義観は、すぐ、その障子の外で、未だ自分を見ているように思えた。

荒い足音、障子を開けたので入って来た冷たい風に、綱手は、眼をさました。

「百城様」

月丸は、綱手の声で、心強くなった。周章てている呼吸、狼狽している心臓を押えながら、鞘へ刀を納めて、手早く、蒲団へ差込んで

「未だ、眠らぬか」

「貴方様は――何ちらへ」

「わしか――」

月丸は、綱手も、自分が、小太郎を斬りに行ったのを、知っているのではないか、というように感じた。

「わしは、厠へ」

「冷とうございますから、早う、お臥みなされませ」

綱手は、媚と、品位とを含んだ、滑らかな口振でいった。

「寒いのう――程なく、夜が明けよう」

「ほんに、寒い――」