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なんごくたいへいき

南国太平記

直木 三十五

線上閱讀直木 三十五《南国太平記(なんごくたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 493,291 字 · 991 頁

青空文庫

それから、指の先で、摘み上げて、暫く、いじっていたが、そのいじっている一粒を、静かに、口の中へ入れた。

皺の多い、筋肉のたるんだ、歯の少し抜けた脣を、暫く動かしてから、ちょっと、眉を寄せて、水を、一口飲んだ。そして、両手を、膝の上に置いて、じっとしていた。

人々は、寝静まっているらしく、何んの物音もしなかった。次の間には、茶釜が、微かに鳴っていた。

調所は、自分のして来た努力の完成したことに、十分満足であったし、もう、これから後に、自分が出ようとする仕事の無いのにも、十分、安心ができた。

腹の中が、少し熱くなったようであった。調所は、脣を嘗めてから、もう一度、仏壇へ御辞儀した。そして

「ただ今、おあとを、お慕い申しまする」

と、いった。それから、膝を斉興の居間の方へ向けて、同じように、頭を下げて

「つつがなく、御帰国、遊ばしませ。これにて、御家は、安泰にござりまする。御寿命の後は、冥途にて、又、御奉公を勤めまする」

そういってから、暫く、言葉を切っていたが

「斉彬公にも、つつがなく、在しますよう。御幼君には、あの世にて、お詫び申し上げまする。老人の亡き後は、意のままに、御消費下されますよう。