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なんごくたいへいき

南国太平記

直木 三十五

線上閱讀直木 三十五《南国太平記(なんごくたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 493,291 字 · 991 頁

青空文庫

二三度、微かに、蒲団が、動いた。

四つの時計が鳴って暫くすると、邸の中が騒がしくなった。人声は低く、物音は高く。それは、邸内のみでなく、門の外にも、馬の嘶き、馬蹄の音、話声がしていた。

長い廊下の端から、調所の部屋へ、近づく足音がして

「御家老様」

と、いう声がした。

「御用意を、お願い仕りまする」

暫く、そういったまま、黙っていたが、返事が無いので、立去った。

物音も、人声も、だんだん高くなってきた。そして、小走りに、走って来る足音がして

「調所殿」

と、叫んだ。返事が無かった。

「御免下され」

襖が開いた。仏壇の明りは、微かになって、またたいていた。

「御出立でござりまするが――」

侍は、臥っている調所に、こう声をかけて、じっと、顔を眺めていたが

「調所殿」

と、叫んだ。そして、さっと、顔色を変えて、膝を立てて、滑るように、近づいて、額へ手を当てた。素早く、経机の上を見た。胸へ手を差込んだ。そして、立上ると、廊下を、けたたましく走って行った。

暫くすると、忙がしく、大勢の足音がして来た。参覲交代のために、帰国する旅支度の斉興が、躓くように、廊下を急いで来た。