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なんごくたいへいき

南国太平記

直木 三十五

線上閱讀直木 三十五《南国太平記(なんごくたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 493,291 字 · 991 頁

青空文庫

三人は、眼を見合せた。和田が、壇のところへ立って

「先生」

と、云った。そして、顔を覗き込むと、脣を噛み切ったらしく、血が流れていた。和田は、振向いて

「いかん」

と、二人の顔を見た。二人も立って来て、左右から、手をかけた。その刹那

「不心得者っ。知己は、千載に待って、猶空しっ」

二人のかけていた手から、恐ろしい力で立上った。高木が、壇へ片脚をかけて

「先生」

玄白斎は、右手の刀を、振るように、顫えるように、上下させながら

「死ねっ、死ねっ、死ねっ」

つづけざまに絶叫した。そして、左手にかけた珠数を空間へ抛りつけたはずみに、火炉の中へ、片足を突込んだ。高木が、素早く、飛び上って、よろめく玄白斎の背後から抱えた。と同時に、和田が、袖を掴んだ。

玄白斎は、二人を引きずるように、身体を延して、血の滴っている脣を顫わせて

「知己を失って、悪逆を重ねて、それが、兵道の統棟かっ」

部屋の中のどっかに現出している牧の生霊を、叱責しているのであった。二人は、袖を持っているくらいでは、引きちぎれそうなので、玄白斎の帯と、左手とへ、手をかけた。

「先生――先生っ」

二人は、力を出して、火炉の中から、引戻そうとした。