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なんごくたいへいき
南国太平記
直木 三十五
線上閱讀直木 三十五《南国太平記(なんごくたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 493,291 字 · 991 頁
、月丸様のために、よいのではあるまいか――確かに、それは、よいことにちがいないが、黙って、自分が、抜け出した後に、月丸様は、何うなさるかしら? 矢張り、出奔なさるであろう。さすれば、同じことじゃもの――思いきって、別れ話を、持ち出そうかしら?――でも――でも、お目にかかったなら、別れられはしない。別れられるものか?)
綱手は、自分が何処に居るのかも忘れて、そんなことを、考えていた。
「退るがよい」
兵太夫は、そういって、立上った。綱手は、周章てて
「いろいろと、並々ならぬ、お世話に、相成りましてござりまする。堺へ参りましてからも、後程のことも、くれぐれ、お願い申し上げまする」
と、いいつつ、よくのめのめと、こんな※(「言+墟のつくり」、第4水準2-88-74)が、いえると、自分で浅ましかった。然し
「これも、恋ゆえ――」
と、思った。
「うむ。浜村と、当家とは、只の間柄ではないから」
と、いいつつ、兵太夫は、庭下駄を履きかけて
「寒うなった。国許は、暖かいが――」
ど、独り言のようにいった。一人の侍が
「次の間の、飾り付けを致しましてござりまする。御見分の程を――」