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なんごくたいへいき

南国太平記

直木 三十五

線上閱讀直木 三十五《南国太平記(なんごくたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 493,291 字 · 991 頁

青空文庫

小太郎は

(意外な事の起るものだ。然し、これも、宿命であろう)

と、思った。

「牧氏に、お頼み申したいが――」

小太郎は、降りる時にも、街へ出てからも、月丸を、暗闇を、注意していたが、月丸の言葉の如く、誰も、加勢などに来ているものがないと判ると、月丸の武士らしさに、信頼の心が起って、こういった。

「はて――」

「某の妹を御存じか」

「綱手殿か」

「左様――もし、某が、貴殿の刀にかかった上は、仔細のこと、それに、お申し伝えを願いたい」

「論ないこと、しかと、御引受申す」

「刀、懐中物など、形見として、お渡し願いたい」

「申すまでもなきこと――」

小太郎は、未だ、世の中に、何かし残したことがあるように、茫漠とした世の中への望みが、頭の中にいっぱいに拡がっていたが、それが、何ういうことであるか、はっきり判らなかった。

(牧仲太郎を討つことだ)

と、思ったが、それだけでもなかった。そして、その牧を討つことでさえ、何んだか、漠然としたようで、ただ、次々に湧いてくる自分の危急を、可笑しいもののように、微笑んで眺めていた。そして、自分を討ちに来ている者と並んで、静かに、平然として、歩いておれた。