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なんごくたいへいき

南国太平記

直木 三十五

線上閱讀直木 三十五《南国太平記(なんごくたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 493,291 字 · 991 頁

青空文庫

「斬るな。手取りに致せっ」

と、叫んで、その士は、門の方へ、走って行った。和田は、人々に、囲まれたまま、襟を乱して、肩の骨を、乳の上までを、現しながら、突立っていた。

門から、少し遠いところに、懸声と、足音とが、響いていた。和田が、振向くと、もう暗くて、提灯の灯しか、見えなかった。

「和田っ」

と、高木が、叫んだ。

「おーいっ」

「無事か」

と、絶叫した。和田が

「やられた」

と、叫ぼうとすると、一人が、口を押えた。そして

「黙れっ、喋ってはならん」

と、云いつつ、両腕を掴んで、奥の方へ引立てた。和田は、烈しく、顔を振って

「やられた」

と、指の間から、叫んだが、もう、その声は、高木に聞えぬらしく、遥かに、遠いところで、いろんな叫びが、ごっちゃになって、乱れていた。

「郷田は、居ないのか」

和田は、細引の結び目を、指先で、調べながら聞いた。だが、誰も返事をしなかった。門の外から

「おーい、誰か、二三人来い。早く、早くっ」

と、叫んだ。

「大丈夫か」

「大丈夫だ。わしと、時田とが、見張っておるから」

と、いうと同時に、二三人が、走って行ってしまった。

(高木は、暴れているな、暴れても――無益だのに――)