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なんごくたいへいき
南国太平記
直木 三十五
線上閱讀直木 三十五《南国太平記(なんごくたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 493,291 字 · 991 頁
「こちらに、仙波小太郎さんって、おいでですかえ」
小太郎も、庄吉も、胸を突かれた。御鷹野から戻って来た時から、小太郎には
(もしかしたなら――)
と、いう不安があった。庄吉は、巾着切として、すぐ、奉行所の手段の、常套的なものが、頭へ響いた。
(俺ではねえかしら)
と、ちらっと、思ったが、明らかに、仙波小太郎といっている以上、小太郎の心配している鷹野からのことにちがいない、と思うと、後方へ、手を振って、早く、逃げて下さい、と合図をしたかったが、自分では、右手を振ったつもりのが、その手が無かった。そして、それの無いのを考えないくらいに、庄吉は、危険の迫っているのに、気をとられていた。庄吉は
「小太郎?」
と、いいながら、時間を、少しでも、延そうとして、立上って、表の間へ出て来た。
「何ちらさまで?」
庄吉は、南玉が、出て行ったままで戻らないのと思い合せると、もう、自分の判断に、間違いはないと、考えた。そして、小太郎と、深雪とが、物音も立てないで、坐っているらしいのを感じて
「居りませんよ」
と、いった刹那、変装している手先は、ちらっと、庄吉を見てから、格子の外へ、手を振った。