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なんごくたいへいき

南国太平記

直木 三十五

線上閱讀直木 三十五《南国太平記(なんごくたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 493,291 字 · 991 頁

青空文庫

長屋の人々は、格子の外から、いっぱいになって、中の気配をうかがっていた。

「忝のうござる」

小太郎は、同心に一礼して、歩き出した。

「お兄様」

深雪が、立上って、手を延した。

「何んじゃ」

小太郎が、振向くと一緒に、涙が、頬を伝って、咽び泣きの声が、漏れてきた。

「未練者」

小太郎は、睨みつけたが、同じように、涙を浮べていた。

「深雪さん、とにかく――」

庄吉は、深雪に、蹤いて行け、と、眼で合図をした。小太郎は、群集の中を、袖をとられて出て行った。庄吉と、南玉と、深雪とが、人々の後方からつづくと、長屋の一人が

「庄公、お前でなくてよかったのう」

と、云った。

「この野郎っ」

庄吉は、左手で、そう云った男の、横面を撲った。

「何うするの、こうするのって、何うも、こうも、ありゃしねえ」

南玉は、いつもの、飄逸さを、すっかり無くしていた。庄吉も、深雪も、黙って、俯向いていた。

「俺、これから、吉んとこへ行って、仲間の奴らに、手別けしてもらって、益満さんを捜そう」

「そうかい。そうしてくれ。一刻でも、早い方がいいや」

「行って来らあ」

庄吉が、立上った。

(俺が、片腕を失くしたくらい、何んでもねえ。