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なんごくたいへいき

南国太平記

直木 三十五

線上閱讀直木 三十五《南国太平記(なんごくたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 493,291 字 · 991 頁

青空文庫

二階、三階

こちゃ苦界

益満は、唄いながら、広い階段を、上りきると

座敷は、ここかい

ちがうかい

「おーいっ、ここだよ」

そうかい――

と、益満が、唄うと

「この人は――」

と、富士春が、袖を引いた。

「ええ、お有難う存じます」

「有難う存じます」

二人が、廊下へ手をつくと

「入んねえ」

「御免下さいまし」

客は、三十七、八の遊人風の人であった。盃を、益満に出して

「一つ、やりねえ」

益満は、手を延して、盃をもらった。女中が、酌をした。

「今、一人来るんだ。一寸、待ってくれ、呼びにやってるから、お前さんの唄を、是非聞きたいって奴でね。つい、そこだから、すぐ来らあ」

そういっているうちに、手早く、金を包んで、富士春の前へ抛げ出した。

「二つ、三つで結構だ」

「有難う存じます」

富士春は、帯の間へ、鳥目を押し込んだ。

「いらっしゃいます方は、方と致しまして、何か一つ」

富士春は、三味線を抱えた。

「野暮に出来ていて、流行唄一つ知らんでの、よろしく、頼まあ」

「まあ、お固うございますこと。たまる一方で――」

「借金山となりにけりさ」

「まあ、御上手な――」

「口先だけは――言訳に慣れているからの」