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なんごくたいへいき
南国太平記
直木 三十五
線上閱讀直木 三十五《南国太平記(なんごくたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 493,291 字 · 991 頁
深雪は、黙って、足早に、歩き出した。三田の通りへ出ると、暖かい夜とて、通行人が、ちらちらしていた。
(困った。もう、二町と、ありゃしねえ)
南玉は、思案につきた。
「よう」
と、声をかけて、一人の若い衆に、擦れちがうと、侍が一人、小者を二人供にして、足早に歩いて来た。小者は、ちらっと、深雪を見てから、すぐ、南玉へ眼をくれて
「今晩は、師匠」
と、いった。
「ええ」
南玉が、士を見ると同時に、士が、深雪を見て
「珍しい。深雪ではないか」
と、声をかけて、立止まった。
「ああっ」
深雪は、小腰をかがめて
「お変りもござりませんで、お目出度う存じます」
「まだ、江戸にいたか」
「はい」
「小太郎は、如何している?」
「共々――」
「その方は、講釈師だの、よく、益満と一緒に歩いていた」
「はい、名越の殿様でござりますか。お目にはかかっておりますが、つい、御挨拶も致しませず、手前、桃牛舎南玉と申します、何分よろしく」
「只今の住居は?」
「はい、宇田川町の、こちらの家に」
「小太郎は、牧をねらっておるらしいが、牧の消息を存じているか」
「いいえ、それを――」
「又、上方へ上るのを見かけたと、国許から、参った使が、申していたが――」