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なんごくたいへいき

南国太平記

直木 三十五

線上閱讀直木 三十五《南国太平記(なんごくたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 493,291 字 · 991 頁

青空文庫

俺は、今更、科学者にもなれん。ただ、名も、金も要らん。赤心をもって、公のため、天下のために働いてみる」

「そうか」

大久保が、こう云った時、女中が

「旦那様が、お召しでござります」

と、云って来た。西郷が、去った。二人は、黙って、明るい陽ざしの庭を眺めていた。暫くして、西郷が出て来て

「有村」

と、云って、刀を、刀掛けに置いて、坐った。

「大殿が、急に、御出府になるぞ」

「駄目か」

有村が、叫んだ。

「同志の者に――御出府のこともあるし、御家督がきまるし、斉彬公の御代になってからのことにしては、と、申して参らんか。今から、用意しても、追いつくまい」

有村は、立上った。大久保が

「その方がよい」

と、云った。有村は、西郷に目礼したままで、足早に、出て行ってしまった。

「西郷、なまじなことをしては、当家に、人種が無くなるぞ」

「斉彬公と、貴公とさえ残っておってくれたなら、何んとかなるであろう。俺は、何んでも、頼まれたら、断れんからのう」

と、云って、西郷が、笑った。

「益満とは――又、乱暴者を選んだの。何をするか知れん、彼奴は」

「困ったら、貴公が、尻拭いをしてくれ。俺は、大久保のように、じっと、考えておれん性だ」