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なんごくたいへいき

南国太平記

直木 三十五

線上閱讀直木 三十五《南国太平記(なんごくたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 493,291 字 · 991 頁

青空文庫

「知らんのか」

「誰に?」

庄吉が、次の間で、聞いたらしく、動く気配がした。

「牧の倅に」

「百城月丸か」

「月丸?」

「大阪では、変名しておったそうだが――」

深雪が

「あの、それは――」

と、いったまま、拳を顫わせて、眼を、ヒステリカルに光らせて、呼吸を喘ませてしまった。

「不思議なこともある」

益満が、いつにない真面目な、腕組をして

「この姉が、矢張り、牧の手にかかって、相果てた」

「ふむ、矢張り、尤物であろうの。それは、惜しい。成る程、不思議なこともあるが、牧の倅と申せば、斉興公の御一行に入っている筈であるが――」

「何うして? 七瀬殿が、又、牧の手にかかったのか――」

「詳しいことは判らんが、噂に聞くと、彼奴、お由羅派として、四ツ本喜十郎の許におったらしい。それへ、何うしたのか、その七瀬が斬込んで、殺されたというがの。無礼討ちになった、という噂もあるし――何れにせよ、牧の小倅の手にかかったことは、真実じゃ」

深雪は、俯向いていたが、泣いていなかった。死んでみても、何う苦しんでみても、何をしてみても、何を考えてみても、何うしようもない、大きい魔物の力が、自分達一家を引っ掴んでいるように思えた。